ディレクターの友川綾子です。
2月後半にパリに出かけてきました。
きっかけは11月の根津での展覧会で、
「水川さんの作品はヨーロッパの方に喜ばれそう」
と言ってくださったお客様がいたからです。
実は以前より、東京だけではなく、パリや京都でも展覧会をつくりたいと思ってきました。水川さんの「あぶり絵」は、日本文化を技法として取り入れている現代アートだからこそ、異なる文化圏では、驚かれたり喜ばれたりすることでしょう。また、お相手が日本文化に馴染みが薄いからこそ、表現としてより研ぎすまさなければならないことも発見できるかもしれません。他山の石に磨かれる機会は、アーティストにとっても刺激になります。
久しぶりの石畳の街並みに、はしゃいでしまいました。
私にとってのパリは「はじまりの場所」です。
20年近くも前のこと。まだ20代前半だった私は、自分の将来を決めかねていました。ひとつだけ決めていたのは、20代はやりたいことをとことんやって、自分が心から好きだと思うことを見つけようということ。そうして出かけたのがパリでした。
はじめての外国での長期滞在。フランス語も話せません(いまも)。ゴミの出し方やマルシェでの買い物の仕方を覚えるだけでも一苦労でした。慣れない暮らし。でも、おしゃれなマダムを眺めたり、美術館に行くだけで楽しいのがパリ。
さまざまなきっかけがあり、フランス人の友人のお父様が個展をしている会場を、夜中にガラス越しに眺める機会がありました。私にとってそれまでアートは美術館で出会うもの。けれどもそこはギャラリーです。アートを販売している場所があり、人がいることを、新鮮に感じたのを今でもはっきり覚えています。
その新鮮さを抱えたまま、帰国後、Bunkamura Galleryで働くことになりました。私のアートキャリアのはじまりです。
思い出話が長くなりました。今回のパリではギャラリーオーナーさんに会うことができました。サン=ルイ島にある画廊。オーナーは日本文化が大好きです。近く企画をご一緒できそう。日本とは商習慣も違うでしょうし、なかなかにチャレンジングですが、何事もやってみなければわかりません。
NFT Parisにも出かけてきました。
弊社はNFT技術を使用したデジタル証明書を発行しています。NFTシーンを肌で感じてみようと出かけてきました。
2日間のNFT Parisは会場内でトークイベントが途切れなく開催されていました。NFTアートを販売しているギャラリーなど、さまざまな企業が出展しています。NFTアートを出力して額に入れてくれるサービスもあって、なんでもあり。
一時期、話題になったアートNFTの高額取引のその後はあまり理解していないのですが、NFT技術は次第に生活のインフラと化してきていること、そのためのルールづくりや取引の倫理観などもトークテーマになっていました。
デジタルアートに偏見はないタイプですが、液晶ディスプレイに表示された作品は長時間みているのがしんどい。アート鑑賞に慣れている人ほど、食い入るように作品を見てしまうので、必要以上に瞳孔がディスプレイの光を取り込んでしまい、疲労が溜まるのだと思います。長く見ていられないと、作品の良さを味わうに至らないところが辛いところ。
ポンピドゥーではクリスチャン・マークレー展を鑑賞。
広いポンピドゥーには、パブリックスペースに子供の遊び場が設置されています。カラフルで見た目にも楽しそうです。
そして、今回の滞在では象書家の豚星なつみさんに大変にお世話になりました。
左がパリマダムになった豚星なつみさん。
彼女はパリ郊外在住。異国の地で第2の人生を謳歌しています。今年秋にはパリ市内のカフェギャラリーにて展覧会を開催予定。彼女の書はパリの方々にとても喜んでもらえることでしょう。開催の報告が楽しみです。
また、今回のリサーチでは、EUジャパンフェストさんにサポートをいただきました。アートを通じて世界とつながることで、わたしたちの暮らしはより豊かで平和なものになる。EUジャパンフェストさんの素晴らしい活動を広げていくためにも、この旅でのつながりを、先々の活動で活かしていきます。
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