ブログ「Giardino da mangiare おいしい庭」

生活を豊かにするアートと美味しいものをテーマに編んでいます

人々を「まぜる」のは、感覚を呼び覚ますアートと料理


なぜだか最近、本棚に料理に関する本が増えてゆく。美しいものや感性が磨かれるものに想いを寄せていると、自然に手に取るのが料理にまつわる本なのである。以前にこのブログでも紹介した土井善晴さんの『利他と料理』などはその典型だし、オーガニック料理のカリスマでレストラン「シェパニーズ」のオーナーシェフでもあるアリス・ウォータースの『アート オブ シンプルフード』も素敵だ。


そして、最もお気に入りなのが『スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン』である。日本でも人気の高い現代アートのアーティスト、オラファー・エリアソンがベルリンに構えるスタジオで、来客を含めて毎日皆が食べる「まかない昼食」のレシピが記録されたものだ。なんと、スタジオ内には専用のキッチンがあり、専属料理人もいる。15年ほど前に始まったこの「まかない昼食」プロジェクトの調理を当初担当していたのは、アーティスト兼フードアクティビストでありシェフでもある日本人女性の岩間朝子である。


岩間は本書でこう語る。


「何を料理すべきかを知るために、私たちは自分の身体の声に耳をすまさなくてはならない」


身体の声に耳を澄ませば、体は旬の自然なものを欲する。そして手をかけすぎずに素材の味をそのまま活かした料理が一番美味しい。そして、人は美味しいものを求めて、テーブルに集う。『利他と料理』の中で、土井善晴はいう。


「料理をするという行為は、食べる人を愛しているということ。食べるという行為は愛されていると受け取ること」


アリス・ウォータースも著作の中で、一緒に食べることを大切にしようと語る。彼女による食事の時間はこうだ。


「食事の時間は他の人の気持ちを理解したり、共感したり、心をオープンにシェアしたり、身体に栄養を与えたり、コミュニケーションをするひとときです」


居心地の良いコミュニティを育てていくために必要なこと、人と人とが繋がるためには何があると良いか? という問いに、『コミュニティ難民のススメ』の著者、アサダワタル氏はかつて、「一緒にご飯を食べること」と答えていた。


スタジオ・オラファー・エリアソンでは、アーティスト、建築家、研究者、出版・広報チーム、総務・経理部門スタッフなど多種多様な90名が共に働き、毎日のように昼食を共にする。スタジオを訪れるゲストが加わることもある。オラファーにとって、スタッフやゲストと日々、共に食べる行為は、アート制作や日常生活とも不可分で大切な営みなのである。


組織マネジメントの観点から見ても面白い話題なのではとも思うが、やはりここは「美」や「感性」そして、人が人として豊かに生き、互いを創発しあうクリエイティビティの高まりが生まれるコミュニティのあり方として、参考にするべきと考える。


スタジオ・オラファー・エリアソン キッチン』には、美味しい料理の数々と、示唆深い言葉が散りばめられている。


アリス・ウォータースは本書にこんな言葉を寄せた。


「美とは思いやりを伝える手段でもある。美しい環境の中で行われる作業にはより多くの喜びが感じられる」


料理をして美しく盛り付け、誰かと一緒にその料理を五感で味わうことは、日常で楽しめる持続可能なアート・プロジェクトである。






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