六本木アートコンプレックスと隠れ家ディナー



今月、26日まで開催までタカ・イシイギャラリーで開催中の内藤礼展に行きたくて、久しぶりに六本木ヒルズのすぐ近くにあるギャラリーコンプレックスに足を運んだ。師走の週末。日が暮れて寒い時間帯にも関わらず、ギャラリー群は賑わっていた。


ファインでスノッブ、現実感の薄いギャラリーで、洒落た服で着飾りながらアートを吟味しつつギャラリストと社交するコレクター達。ひと昔まえのコレクターよりももっとカジュアルに「お買い物」感覚でアートを愛でる、若年層が増えているんだなと感じる。大変だった2020年を、東京のアートギャラリー群は、元気に乗り越えられそうな空気を感じ、久しぶりに華やかな気分を味あわせてもらった。


作品の印象にいつも「祈り」という言葉を思い浮かべてしまう、内藤礼の展示は、いつもながらの安定感で、素晴らしかった。紙に赤の色鉛筆で描いたシリーズ《color beginning》をながめてると、明るい光の中にたゆたう色彩が浮かんでは消えていくようで、届きそうでとどかない、儚さと全てを包み込む光の存在を感じて、胸がすっとした。彼女の世界観は、コロナ禍でも揺らがなかったようである。いや、もしかしたら、数年経ったころに、作品の表層に浮かび上がって来るのかもしれない。


ペロタン東京は現在アポイント制で運営しているために、中には入らなかったのだが、大きなウィンドウ越しに、フランス人画家クレア・タブレの絵画作品が目に鮮やかだった。


普段は二人以上の関係性を主題にした作品を制作してきた彼女が、今回発表していたのはいずれもセルフポートレイトだった。なんでも、ロックダウン中に描ためたものだという。絵の中の彼女が見つめているのは、自分自身の内面なのだという。今年の特殊な日常生活は、アーティストの制作にも、こうして響いている。彼女のように、内面に目を向けて過ごした人は、想像よりもずっと多いのかもしれない。グリーンの背景に赤いストライプのローブを羽織ったポートレイトが印象に残った。


Yutaka Kikutake Galleryでは、画家の田幡浩一が「牛乳のある風景」と題する個展を開催していた。静物を丁寧にみずみずしく描き、その支持体を中央で綺麗に分断して上下にずらす。高い技術で描く筆致に古き良き絵画への憧憬を感じつつも、セザンヌ以降のキュビズムで絵画が追求してきた絵画上での視点の分断と再統合を指し示すような「ずれ」に、瑞々しい感性から生まれた、知的な好奇心がつまったコンセプトを感じられる。彼のような才能と出会い続けられることは、アート巡りの醍醐味であるなぁと思う。


ANB Tokyoではグラフィティアーティストの個展を鑑賞した後、西麻布の会員制レストランでディナーを楽しんだ。今年はじめに出席をしたパーティーで、ディナー優待券をビンゴゲームで引き当てたのだけれど、コロナ騒動で長らく外食なんていう状況ではなく、今年いっぱいの優待期限の前に、すべりこみでディナーにありつけたという次第である。


お店のクリスマスツリーの輝きを眺めながら、経験したことのない出来事に戸惑い、一喜一憂した今年が終わっていくこと、そこで得た気づきと小さくても確かな幸せを集めて、次の年を迎えられることに、感謝が込み上げてくる。


小さな油彩画のような、デザートを食べながら。



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