眠れるお茶をください




以前、ルピシアという紅茶専門店でアルバイトをしていたことがある。


「専門店」という性格上、従業員教育をきっちりとしていて、アルバイトだというのに、まる一日、自由が丘の本店に出かけて研修を受けさせてくれたり、お茶の知識を確かめるテストが実施されたりしたおかげで、3ヶ月程度しか働かなかったのに、短期間でちゃっかりお茶の知識を美味しくお茶を淹れるテクニックを身につけることができた。


アルバイト生活を満喫していたある夜、店頭に立っていると閉店間際に珍しく男性のひとり客が来店した。


「眠れるお茶をください」


その男性が言ったのはそれだけで、はっと顔を見ると、目がくらい。


あぁなにか、辛いことがあるんだな。


そう思って、慌ててノンカフェインのカモミールティーの茶葉を差し出して、香りを確かめてもらい、マテ茶とカモミールティーを購入いただいた。


ルピシアのお茶は上質で種類も豊富だけれど、ティーバッグのチョイスが少なくて男性が手を伸ばすには少しハードルがあるので、今おすすめするなら、オーガニックティーでパッケージも癒される「クリッパー」のナイトティーシリーズ。


パッケージに七人の小人のねぼ助の名前「sleepy」と書かれているのがナイティナイト。柑橘系の香りがふっと香る。柑橘系は元気になりたい時とアロマの本で紹介されていることも多いのだが、夜眠る前にでも、ちょっと柑橘の香りを嗅ぐと、不思議とホットすることも多いように思う。眠るのにも元気が必要ということか。



ハーブティーらしい華やかな香りが楽しいのが、スノア&ピース。そして、男性に向いているなあと思うのがミントティー。少しミルクを足すと、ちょっとまったりとして、お腹が落ち着くよう。


本当に不眠で辛いのであれば、睡眠導入剤の方がいいのだろうが、病院にいくほどの元気がなかったり、そもそも元気がなさ過ぎて「病院にいく」という判断をできていなかったりする人は、実はかなりいるのだと思う。


お茶は薬ではないので、「お茶を飲む=よく眠れるようになる」と考えるのは、ちょっと違う。けれど、よく眠るために、お茶の力を借りたいという「気分」はよくわかった。


お茶のもつ「自然の力」を感じたい。自分をケミカルなものでごまかして肉体を使い倒すのではなくて、温かさと香りに「癒されたい」、そして心身ともに活力を取り戻したい。そういうことなのだろう。


よく眠れるようにお茶を、と、思うのであれば、せめてゆっくりと淹れて、深く香りを吸い込んで、お茶を飲む時ぐらいは、テレビもスマホもOFFにして、温かいお茶がお腹を温める様子を深く味わってみてほしい。


頭がぼんやりとしてくるぐらいがちょうどいい。


その日あった、幸せなこと、楽しいことを五つ、選んで思い浮かべてみるのがおすすめである。

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