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ABDで読む『フルライフ』

最終更新: 2月6日


フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と 100年の人生をつなぐ時間戦略

ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)という読書会に定期的に参加している。今日は予防医学研究者の石川義樹さんの著作『フルライフ』がお題。オンラインで開催された読書会には10名が参加した。


本書は、長いスパンで人生を俯瞰した時に、その時期ごとに何に重点を置くべきであるのか、読者に問いを立てるというのを狙いにしている。キーワードは「Well-Doing(よくする)」と「Well-Being(よくある)」であり、その比重とバランスを人生のタームごとに意識せよというのが問いであった。


おおよそ20代から30代半ばは「ハードワーク期」で職人のように技能を磨き、その後は「ブランディング期」として他業界にも仲間を増やしつつ信頼と実績を積み重ねていく期間、そして50代に迎える「アチーブメント期」で、その人生でなすべきもっとも大切な志事に邁進すべく本気を出すのだ! と、著者は語る。


ABDでは対話の時間が重視されるのだが、30代〜50代でありキャリア的には中堅でブランディング期以降と本書では定義される参加者が占めており、石川が提示したこの3つのタームについては、様々な意見が湧き出てきて、興味深かった。


個人的な違和感としては、本書はビジネス書として企画・出版されたためか、「人生の時間戦略」をテーマにしているというのに、女性特有の結婚・妊娠・出産・子育てといった事情が見事にすっぽりと扱われていない点である。ビジネス書のターゲット設計はあくまでもおじさまがたなのだなと、「女性活躍推進」という言葉の虚無感を胸に抱いた。著者が理想的な時間設計をしている人物例は、テスラ社のイーロン・マスクなので、どうも本書が理想とする「フルライフ」とは、アメリカンヒーローの誕生物語のようである。


50代女性管理職の参加者はこれに対し、「石川、ふっ、若いな。人生いろいろあるねん」とコメントしてくれ、妙に安心をしたものだ。出版しているNewsPicks社は、「新しい時代のためのメディア」というようなことを旗印にしているのだが、役員のジェンダーバランスは100%男性なので、何事も鵜呑みにしてはいけないのである。時代はまだまだ働く女性に厳しい。


もちろん、学びもあった。著者が提案する、一週間を月曜から始まるではなく多くの人にとって自由時間である土日を始まりと考えるための、土曜始まりカレンダーや、人生戦略を3年ごとに具体化して考えてみることなどは、明日から生活に取り入れるつもりだ。そして、本書でもっとも面白かったのは、「はじめに」で提案されていた、充実した人生を考えるための問いである。


誰しもいきなり「充実した人生ってどんなだと思う?」と聞かれると答え辛いもの。であれば、反対に「空っぽな人生ってどんなもの?」と、想像してみて、それを掘り下げていけば、本当に求めているもの、求めていないもの、が見えてくるというのだ。


これは興味深いなと、読書会のあと、一人でこの問いに向き合ってみた。


私にとっての充実した人生とは、「よく学び、よく遊び、美しい世界や人と出会い続けること」である。いつも、いくつになっても、何かに恋をするように憧れていたい。


今年出かけた穂高養生園、20代半ばで一ヶ月滞在していたパリ。ハワイでみた虹とイルカ。タイのチェンマイで地元の夫婦が川に流した灯篭。会場デザインが素晴らしかったグラン・パレの北斎展、アテネで訪れた古代の神殿。ポートランドの朝焼け。


これまでの人生で素敵だったシーンが次々と思い出された。ああそうだ、可能性がないから心に蓋をしていたけれど、私は旅をするのが本当に好きなんだ。日常の中にある旅のような時間も含めて。


ここに気がつかせてもらっただけでも、本書を手に取ったかいがある。そして、読書会で多様な感想が聞けたこともまたみのりが大きかった。


よく学び、よく旅をするために、自分の時間を大事に使おうではないか。それが私の「フルライフ」。


これからこの本を手にする人は、ぜひこの「はじめに」の問いに向き合ってから、読み進めて見て欲しい。情報の吸収の仕方が全く異なると想像できるから。

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