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アール・デコ空間とローマ風ピッツァ(東京都庭園美術館 生命の庭)

更新日:2021年1月26日



東京都庭園美術館といえば、アール・デコ建築で有名である。ルネ・ラリックの玄関装飾をはじめ、天井のランプや階段の装飾など、建物だけでも随所に見所のある美しい美術館だ。


そこで現在開催されているのが、日本人現代作家8名による「人と自然」をテーマとした展覧会「生命の庭」である。美術業界の諸先輩がたがSNSに展覧会の様子をアップするさまをみていると、べた褒めしているわけではないが、行間に「よいものを観た」と書いてあるようにお見受けし、ぽっかりと時間が空いた平日に訪れてみた。


よく整えられた庭を散歩しているような、呼吸が深くなる展覧会だった。


8名の作家の作品が、それぞれのあり様で、とても有機的にアール・デコ空間に呼応していた。建築空間とアート作品が調和している。なんども訪れている庭園美術館であるが、これまでになく、建物のアール・デコ様式をよく味わうことができたように感じた。





庭を散歩するような気分で、各部屋の作品を眺め歩いていると、自然と窓越しに見える庭の樹木にも目がゆく。作品が主張しすぎない。けれど、建物が主役なわけでもない。この展示空間に居る、自分自身のネイチャー(自然)を取り戻せるような、素敵な鑑賞体験だった。





庭園美術館の新館は、モダンな建築様式でいわゆるホワイトキューブ型のギャラリーが2部屋あるのだが、ここでの鑑賞体験は、本館とはくっきりとコントラストがある。白壁に囲まれると、身体がほんの少し緊張して、呼吸も浅めに整う。こざっぱりとした清潔すぎる空間の中では、作品が少々「かしこまって」いるように見えたから、なんだか可笑しかった。


アート作品の展示では一般的であり、「もっとも作品を美しく見せる」といわれるホワイトキューブ空間は、「自然」とは切り離されたあり方をしているのだろう。


「生命の庭」は、人間性と自然回帰を謳う企画であることが、本館と新館との展示空間のコントラストで、よく了解できたように思う。


展示鑑賞後には美しい庭園のベンチで人心地つき、東京都庭園美術館の門扉のちょうど真向かいにあるピッツェリアに向かった。真向かいなのに、横断歩道がないので、ぐるっと迂回しなければたどり着かないのだが、それだけの価値がある店だ。



上部がアールになっているドアがふたつ並んでいる可愛らしい外観が目印。ここではジェラートとローマ風のピザが食べられる。食料雑貨も並んでいて、イタリアのちょっと田舎のほうの街にでもありそうなお店だ。ひとりでも気軽に入れるので、軽いランチにちょうどいい。



この日はレモンソーダと、マルゲリータ。ふかふかのピザ生地に、フレッシュなバジルの香りが癒される。たらりかかったオリーブオイルが、とても美味しい。



東京都庭園美術館


AREGA






Museum fatigue:美術館づかれ
展示空間で作品を見るごとに1作品を見る時間が減少していく現象を名付けた言葉。本ブログのMuseum fatigueカテゴリーは、アート作品の鑑賞に肉体・精神的疲労はつきものであり、鑑賞後には美術館近くのカフェやレストランでのんびりと座り、作品の印象を語らう時間をもつことが理想的だという考えのもと、筆者が実際に出かけた美術展と近くの飲食店等を紹介するものである。


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